ジングルベルは、もう鳴らない
樹里はブンタに笑い掛けたが、心は今にも消えてしまいそうだ。大人の恋愛は、いちいち身に染みる。その痛み一つ一つが、大きく重たい。ブンタに視線を向けたフリをして、ズンと項垂れていた。そんなまま、一歩二歩と進んで気付く。隣を歩いている斎藤の靴が見えない。慌てて振り返った樹里が目にしたのは、顔を歪ませ何故か固まっている斎藤だった。
「斎藤さん?」
「ヒロミ……」
「え?」
その視線の先を辿る。暗がりから徐々に近付いて来るぼんやりとした人影。ヒロミ? きちんと捉えようと、樹里は目を凝らした。きっと、ブンタは分かったのだろう。嬉しそうに脇を掛けて行く。そして、笑いもしない斎藤が引っ張られ、樹里から離れて行った。
「斎藤さん?」
「ヒロミ……」
「え?」
その視線の先を辿る。暗がりから徐々に近付いて来るぼんやりとした人影。ヒロミ? きちんと捉えようと、樹里は目を凝らした。きっと、ブンタは分かったのだろう。嬉しそうに脇を掛けて行く。そして、笑いもしない斎藤が引っ張られ、樹里から離れて行った。