ジングルベルは、もう鳴らない
「あの……僕も、松村さんが好き、だと思っています」
きょとんと彼を見ていた目を、驚き見開いた。バカみたいにちょっとだけ開いた口が閉じられない。
「こんなおじさんですし……で、デートにも誘えませんでしたし。伝えることもないと思っていたんですけど……お恥ずかしながら、そういう気持ちを持っています」
「は、はい」
「ですが、僕はただお付き合いをするのではなくて、結婚というものもきちんと考えていきたいと思っています。もう五十過ぎてますし、何かあった時を考えちゃうんですよね。ただ、松村さんは結婚を望まれていないですよね」
斎藤はそう言って、真っ直ぐに樹里を見る。「なので、お付き合いはできません」と、ハッキリと言った。少し悲しそうに。
「あの……それはちょっと違うかも、知れないです」
「え?」
「絶対に結婚をしたくないわけじゃないんです。あんなことがあったので……強がりもあったかも知れません。結婚をしなければいけない風向きが嫌になった面も、確かにあります。結婚をしなくても、仕事があって友人もいる。それで幸せだと思えたから。でも……その、結婚がしたくないわけではないんです。《《わざわざ》》相手を探すようなことはしたくないですけど」
ちょっと必死になっていた。結婚をしたいとは、今も強く思っていない。けれど、そんなことよりも彼の傍にいたい。樹里の本心の叫びだった。
きょとんと彼を見ていた目を、驚き見開いた。バカみたいにちょっとだけ開いた口が閉じられない。
「こんなおじさんですし……で、デートにも誘えませんでしたし。伝えることもないと思っていたんですけど……お恥ずかしながら、そういう気持ちを持っています」
「は、はい」
「ですが、僕はただお付き合いをするのではなくて、結婚というものもきちんと考えていきたいと思っています。もう五十過ぎてますし、何かあった時を考えちゃうんですよね。ただ、松村さんは結婚を望まれていないですよね」
斎藤はそう言って、真っ直ぐに樹里を見る。「なので、お付き合いはできません」と、ハッキリと言った。少し悲しそうに。
「あの……それはちょっと違うかも、知れないです」
「え?」
「絶対に結婚をしたくないわけじゃないんです。あんなことがあったので……強がりもあったかも知れません。結婚をしなければいけない風向きが嫌になった面も、確かにあります。結婚をしなくても、仕事があって友人もいる。それで幸せだと思えたから。でも……その、結婚がしたくないわけではないんです。《《わざわざ》》相手を探すようなことはしたくないですけど」
ちょっと必死になっていた。結婚をしたいとは、今も強く思っていない。けれど、そんなことよりも彼の傍にいたい。樹里の本心の叫びだった。