ジングルベルは、もう鳴らない
「私、付き合って六年になる彼氏がいるんだ。前の会社の同期で。すごく優しくて、みんなにも好かれているような人で……」
笑顔の千裕が思い浮かぶ。ニコニコと目尻に皺を寄せ笑う顔だ。会いたい、そう言ってくれる。無理しないでね、と気遣ってくれる。そんな千裕が好きであるはずなのに。今はその気持ちすら、揺らいでいる。
「今日ね、急に電話がきたの。私たちと同期の子から。話があるんだけど、会えないかって」
「女ですか」
「ん、そう。女。ばっちりとマスカラを塗って、何があっても指先まで綺麗に整えているような」
だいぶ憎しみが籠っていた。香澄の甘ったるい声が頭に過って、苛立ちが蘇ったのだ。
「あぁ……そういう」
「そういう?」
「別れてくださいとか言われたんじゃないです?」
「あ、うん。そうなの。そう言われた。アイスコーヒーのストローをクルクルしながら」
「チヤホヤされるタイプの女がしそうなことですね。私に振り向かない男を奪うみたいな」
朱莉がそう言うのも変な感じがしたが、今日はっきりと分かった。彼女たちは全く違う考えをしている。チヤホヤされたとしても、朱莉は気にも留めないだろう。逆に、香澄はそれに縋って生きるタイプである。
笑顔の千裕が思い浮かぶ。ニコニコと目尻に皺を寄せ笑う顔だ。会いたい、そう言ってくれる。無理しないでね、と気遣ってくれる。そんな千裕が好きであるはずなのに。今はその気持ちすら、揺らいでいる。
「今日ね、急に電話がきたの。私たちと同期の子から。話があるんだけど、会えないかって」
「女ですか」
「ん、そう。女。ばっちりとマスカラを塗って、何があっても指先まで綺麗に整えているような」
だいぶ憎しみが籠っていた。香澄の甘ったるい声が頭に過って、苛立ちが蘇ったのだ。
「あぁ……そういう」
「そういう?」
「別れてくださいとか言われたんじゃないです?」
「あ、うん。そうなの。そう言われた。アイスコーヒーのストローをクルクルしながら」
「チヤホヤされるタイプの女がしそうなことですね。私に振り向かない男を奪うみたいな」
朱莉がそう言うのも変な感じがしたが、今日はっきりと分かった。彼女たちは全く違う考えをしている。チヤホヤされたとしても、朱莉は気にも留めないだろう。逆に、香澄はそれに縋って生きるタイプである。