ジングルベルは、もう鳴らない
『久しぶり。元気?』
『先月の箱根に行った同期会、千裕が色々世話になったみたいで』
『ありがとうね』
ここから顛末が知れて、樹里の方が笑いものになるかも知れない。だけど、そんなの知ったこっちゃない。どうせもう、あの会社に樹里はいないのだ。
「よし、ごめんね。とりあえずは、メッセージだけ送っておけば大丈夫かな」
「大変だね。大きい会社だと、また色々違うんだろうな。どうせウチなんてさぁ、って言っても樹里は知ってるかぁ」
ヘラヘラと千裕は笑うが、樹里はこう言われるのが心底嫌いだった。
いつもこうやって、千裕は自分を卑下する。樹里の会社の方が大きい。多分、収入も多い。そんなことを言っては、勝手に落ち込むのだ。樹里は人生設計をした上で、三十歳になる時に転職をした。給与面、福利厚生、それから事業面。きちんと考え、努力し、今の仕事を手に入れたのだ。それを、こう言われるのは面白くない。どうせと言うのなら、自分だってそれを変えればいい。その努力すらしないのなら、言わないでもらいたかった。
『先月の箱根に行った同期会、千裕が色々世話になったみたいで』
『ありがとうね』
ここから顛末が知れて、樹里の方が笑いものになるかも知れない。だけど、そんなの知ったこっちゃない。どうせもう、あの会社に樹里はいないのだ。
「よし、ごめんね。とりあえずは、メッセージだけ送っておけば大丈夫かな」
「大変だね。大きい会社だと、また色々違うんだろうな。どうせウチなんてさぁ、って言っても樹里は知ってるかぁ」
ヘラヘラと千裕は笑うが、樹里はこう言われるのが心底嫌いだった。
いつもこうやって、千裕は自分を卑下する。樹里の会社の方が大きい。多分、収入も多い。そんなことを言っては、勝手に落ち込むのだ。樹里は人生設計をした上で、三十歳になる時に転職をした。給与面、福利厚生、それから事業面。きちんと考え、努力し、今の仕事を手に入れたのだ。それを、こう言われるのは面白くない。どうせと言うのなら、自分だってそれを変えればいい。その努力すらしないのなら、言わないでもらいたかった。