ジングルベルは、もう鳴らない
 時計が揺れ、受信したメッセージが表示される。さっきの同期からだった。


『元気だよ。樹里は元気か?』
『同期会なんて最近してないよ』


 勘が当たったことに嫌気が差した。悲しい。悔しい。いや、それ以上に、腹立たしくて仕方なかった。仕事の件だと断って、樹里は堂々と返事を送る。千裕は少し狼狽えたが、仕事だと言われると強く止めることもなかった。


『元気、元気』
『やっぱりそうだよねぇ』
『じゃあさ、これっていつのか分かる?』

 そう打ち込んで、あの時千裕から送られた来た写真も送る。昨日千裕を誘った時よりも、ひどくスムーズに動く指に笑ってしまう。「大変だなぁ」とこちらを窺っている千裕は、ソワソワしているのが隠せていない。
 そしてまた、メッセージを受信する。もう携帯で確認するまでもない。時計で確認をして、はぁ、とあからさまに溜息を吐いた。樹里は真っ直ぐに千裕を見つめる。そして、口を開いた。
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