ジングルベルは、もう鳴らない
「千裕。あなたのしでかしたことは、大きな問題。もう後戻りもできない。私たちの関係も戻らない」
「違うんだ。本当に。ネックレスのことは……確かに言う通りだ。一人じゃ分かんなくって悩んでたら、小笠原が一緒に行ってあげるよって。私なら樹里のこともよく知ってるしって」


 へぇ、とひどく低い声が出た。他の女が選んだネックレス。そんなものに喜んでいたのか。あぁ……だから香澄は、樹里の首元を見て笑っていたんだ。つまりはあの女は、樹里のことを嘲笑っていたのか。ネックレスを外し、静かにそれを千裕に返す。本当は、投げつけてやりたかった。でもそうしなかったのは、自分がより惨めになる気がしたからだ。泣きたくもないのに、徐々に涙が溜まっていくのが分かる。奥歯を食いしばり、千裕を睨んだ。


「小笠原さんに会ったのは、いつ」
「二十三日、だけ。だよ」
「じゃあ、二十二日の金曜日は何してたの。私に、だいぶ前から言ってたわよね? 金曜から泊りで同期会だって。そんな嘘を吐いて、本当は何をしてたの」


 千裕は下を向いて黙り込む。そういうことか、と溜息を吐いた。香澄との関係は、一夜限りではない。それを誤魔化すために、あれこれ嘘を吐いたのだろう。
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