ジングルベルは、もう鳴らない
「関係は、いつからなの」
「いや、本当に……本当に何もなくて」
「そういうのは、もういらない。千裕、正直に答えて」


 ギロッと睨みつけてから、涼しい顔をしてコーヒーを飲んでやった。沸々と腹の中は煮えたぎっているが、今はそれを出さない。上品で流れるように問い掛けた。


「少なくとも一年前からは関係があるわよね」
「え? いや、そんな」
「体のって話じゃない。二人でコソコソ会ってたわよね」
「あ、えっと」

 千裕は口籠ったが、もう確認は取れている。さっきの真面目な同期が教えてくれたのだ。箱根に行ったのは、三年前。それ以降は飲みに行く程度だったが、それぞれが忙しくなって、この一年は飲み会すら開けていない。そう教えてくれた。つまりこの一年、千裕が同期会と言っていたのは全て嘘だったということ。全て香澄と会っていた訳では無いかもしれないが、樹里に嘘をついていたのは確定している。呆れてもう、ものも言えない。

 香澄は、二人の関係を同期から聞いて知ったと言った。真実は分からないが、全て分かった上で関係を持ったのだ。随分と長くスクロールして、出て来た写真を思い出す。それなりの時間は続いていたということか。あの子は、どんな気持ちでネックレスを見に行ったのだろう。ただでさえ、香澄は樹里のことを目の敵にして来たのだ。きっと敵対心しかなかっただろう。そもそも、こうして二人を終わらせることが、そもそもの香澄の計画なのだろうか。
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