ジングルベルは、もう鳴らない
「とにかく、関係は認めるわね」
「あ、えっと。本当に」
「セックスしたんでしょう」
「え……」
もうやけくそだった。香澄のためではない。あの小さな命のために、樹里は自分が惨めになることを選んだ。子供には何の罪もない。生まれる前から存在を否定されることなど、あってはならないのだ。
「関係があったのは、もういつだっていいわ。したわよね?」
とても冷めた目をしているだろう。千裕は青褪めたように見えた。彼の隣の席の女が、こちらを気にしているのが視界に映る。そちらへチラッと目をやると、慌てて目を逸らされてしまった。面白がったって、何も出て来やしない。ただ惨めな女と情けない男が出来上がるだけだ。
「確かに二人で何度か会った。けど、そういうことはしてないんだ。本当に」
「そう。でも、私に嘘を吐いていた。その時点で、疚しい気持ちがあるってことじゃないの? もう私たちの関係は終わり。今後会うこともありません」
「樹里。それは、それは嫌だ」
「嫌だ? 縋ってくるくらいなら、嘘なんか吐くな。実際にどうだったかは知らない。でもね、嫌だって言う資格、千裕にある? 小笠原さんは、苦しんでるんじゃないの? 私だって苦しい」
悔しいよ。そう続けた言葉が、小さくなった。ギュッと唇を噛みしめる。そう思うのは、他の女に取られたからじゃない。今までの幸せな時間が全て、嘘になってしまう気がしたからだ。
「あ、えっと。本当に」
「セックスしたんでしょう」
「え……」
もうやけくそだった。香澄のためではない。あの小さな命のために、樹里は自分が惨めになることを選んだ。子供には何の罪もない。生まれる前から存在を否定されることなど、あってはならないのだ。
「関係があったのは、もういつだっていいわ。したわよね?」
とても冷めた目をしているだろう。千裕は青褪めたように見えた。彼の隣の席の女が、こちらを気にしているのが視界に映る。そちらへチラッと目をやると、慌てて目を逸らされてしまった。面白がったって、何も出て来やしない。ただ惨めな女と情けない男が出来上がるだけだ。
「確かに二人で何度か会った。けど、そういうことはしてないんだ。本当に」
「そう。でも、私に嘘を吐いていた。その時点で、疚しい気持ちがあるってことじゃないの? もう私たちの関係は終わり。今後会うこともありません」
「樹里。それは、それは嫌だ」
「嫌だ? 縋ってくるくらいなら、嘘なんか吐くな。実際にどうだったかは知らない。でもね、嫌だって言う資格、千裕にある? 小笠原さんは、苦しんでるんじゃないの? 私だって苦しい」
悔しいよ。そう続けた言葉が、小さくなった。ギュッと唇を噛みしめる。そう思うのは、他の女に取られたからじゃない。今までの幸せな時間が全て、嘘になってしまう気がしたからだ。