ジングルベルは、もう鳴らない
「あ、今日はカレー屋さんだ。ランチもまだやってる。カレー食べません? ここ、シェアレストランって言うんですかね。日替わりでお店が変わるんです。同じ場所で色んなものが食べられるから、よく来るんですよ。確かこのお店、キーマ美味しかったですよ」
「そうなんだ。いいね、カレーにしよう。仕事にも役立つだろうし」
「仕事って。もう。まぁそうですよね。企画部だと」
「もう癖になってるよ。次の企画に使えるかなぁって、ずっとリサーチしちゃう。休まらないわよねぇ」
仕事の話でも何でもいい。下がりっぱなしだった口角を持ち上げて、笑っていたい。二人は少しはしゃぎながら、店のドアを開ける。そこはシンプルな家具、明るめの音楽。洒落たカフェのような空間だった。
「いらっしゃいませ。二名様ですか」
「はい」
「こちらへどうぞ」
ニコニコ接客をしてくれるのは、まだ学生のような若い女の子だった。キッチンを覗けば、忙しく動くキャップを被った男の人。若夫婦だろうか。こういう所で腕試しをして、店を持つ夢でもあるのだろう。きっと楽しいんだろうな。好きに他人の人生を思い描いたくせに、心は勝手に羨んでいた。
「樹里さん、何します? あ、でもちょっとくださいね」
「うんうん、いいよ。じゃあ私にもね。その方が役立つし」
「あぁまた仕事? 今日は美味しい物でお腹を満たして、新しい明日を考える日です。私はそれの見届け人」
「はい、その通りです」
ふふふっと笑った二人は、仲良くメニューを覗き込んだ。サークル活動の時も、分けられる料理はシェアをする。色んな味を楽しみたいね、という皆の希望である。食品メーカーに勤めている自分たちの仕事のため、だとかではない。単純に、美味しい物を食べたいし知りたい。そういう欲望のためだ。
「そうなんだ。いいね、カレーにしよう。仕事にも役立つだろうし」
「仕事って。もう。まぁそうですよね。企画部だと」
「もう癖になってるよ。次の企画に使えるかなぁって、ずっとリサーチしちゃう。休まらないわよねぇ」
仕事の話でも何でもいい。下がりっぱなしだった口角を持ち上げて、笑っていたい。二人は少しはしゃぎながら、店のドアを開ける。そこはシンプルな家具、明るめの音楽。洒落たカフェのような空間だった。
「いらっしゃいませ。二名様ですか」
「はい」
「こちらへどうぞ」
ニコニコ接客をしてくれるのは、まだ学生のような若い女の子だった。キッチンを覗けば、忙しく動くキャップを被った男の人。若夫婦だろうか。こういう所で腕試しをして、店を持つ夢でもあるのだろう。きっと楽しいんだろうな。好きに他人の人生を思い描いたくせに、心は勝手に羨んでいた。
「樹里さん、何します? あ、でもちょっとくださいね」
「うんうん、いいよ。じゃあ私にもね。その方が役立つし」
「あぁまた仕事? 今日は美味しい物でお腹を満たして、新しい明日を考える日です。私はそれの見届け人」
「はい、その通りです」
ふふふっと笑った二人は、仲良くメニューを覗き込んだ。サークル活動の時も、分けられる料理はシェアをする。色んな味を楽しみたいね、という皆の希望である。食品メーカーに勤めている自分たちの仕事のため、だとかではない。単純に、美味しい物を食べたいし知りたい。そういう欲望のためだ。