ジングルベルは、もう鳴らない
第9話 恋なんて、しばらくいらない
「では、以上の通り。よろしくお願いします」
ミーティングを終え、颯爽と席へ戻る。あれからもう二ヶ月。後ろは見ないと心に決めている。仕事が忙しく、考え込んでしまう時間がないのも幸いして、樹里は立ち止まらずにいられた。今は、『隠れた名店の味』というレトルト商品を出す企画のリーダーを任されている。今回のテーマは、パスタソース。今日は、これまでの調査店について話し合ったところだ。
恋愛自体を諦めたわけではない。けれど、必死に見つけなくてもいいのではないかと思うようになった。わざわざ時間を割くのが勿体ない気がしてしまうのだ。それならば、朱莉と出掛ける方が今では有意義だと感じる。あれ以降、随分仲良くなった朱莉。服を買いに行き、美味い物を食べ、美味しい酒を飲む。恋人のいない生活も、なかなか悪くはない。
それでも残念なのは、完全に吹っ切れたとはまだ言い切れないことだ。千裕を思い出してしまう瞬間は、今もある。その度に、グッと堪えて踏ん張って来た。そんな自分を褒めてやりたいくらいだった。あれから何度か電話を寄越した千裕。もうそれが煩わしくて、メッセージアプリのブロック、更には携帯番号も全部変えてしまった。本当は引っ越しもしたいが、仕事が忙しく出来そうにない。昼食を摂りながら部屋探しをして、新しい生活をイメージすることが、今は何よりも楽しかった。
ミーティングを終え、颯爽と席へ戻る。あれからもう二ヶ月。後ろは見ないと心に決めている。仕事が忙しく、考え込んでしまう時間がないのも幸いして、樹里は立ち止まらずにいられた。今は、『隠れた名店の味』というレトルト商品を出す企画のリーダーを任されている。今回のテーマは、パスタソース。今日は、これまでの調査店について話し合ったところだ。
恋愛自体を諦めたわけではない。けれど、必死に見つけなくてもいいのではないかと思うようになった。わざわざ時間を割くのが勿体ない気がしてしまうのだ。それならば、朱莉と出掛ける方が今では有意義だと感じる。あれ以降、随分仲良くなった朱莉。服を買いに行き、美味い物を食べ、美味しい酒を飲む。恋人のいない生活も、なかなか悪くはない。
それでも残念なのは、完全に吹っ切れたとはまだ言い切れないことだ。千裕を思い出してしまう瞬間は、今もある。その度に、グッと堪えて踏ん張って来た。そんな自分を褒めてやりたいくらいだった。あれから何度か電話を寄越した千裕。もうそれが煩わしくて、メッセージアプリのブロック、更には携帯番号も全部変えてしまった。本当は引っ越しもしたいが、仕事が忙しく出来そうにない。昼食を摂りながら部屋探しをして、新しい生活をイメージすることが、今は何よりも楽しかった。