ジングルベルは、もう鳴らない
樹里は、小さな深呼吸を何度も繰り返した。香澄にバレないよう細く息を吸い、それからワザと大きく息を吐き出した。前を向く。動揺は見せない。それだけを心に決めて。
「小笠原さん。あなたが今、不安なことは分かった。でも今の話だけで、私は簡単に信じることも出来ない。あなたと千裕との関係……何か分かる物ある?」
努めて冷静に話をしたつもりだ。本当は心臓は口から飛び出そうだし、服の中は冷や汗をかいている。それでも、真実を見極めなければいけない。樹里だって、彼との結婚を描いてきた。それも、もう長く思い描いているのだ。
「写真……一緒に撮ったのはないんだけど。これなら、少しは信じて貰えるかな」
香澄は携帯を随分長くスクロールしてから、一枚の写真を樹里に見せた。それは、千裕がスヤスヤと眠っている姿。彼の後ろにぼやけて見えるのは、香澄が今している時計だ。周りに置かれているクッションはフワフワしていて、いかにも彼女が好みそうな物に見えた。何かが崩れる音がする。だって場所がどうであれ、ここに写っているのは、見紛うなく千裕だ。不安はどんどん大きくなった。
「小笠原さん。あなたが今、不安なことは分かった。でも今の話だけで、私は簡単に信じることも出来ない。あなたと千裕との関係……何か分かる物ある?」
努めて冷静に話をしたつもりだ。本当は心臓は口から飛び出そうだし、服の中は冷や汗をかいている。それでも、真実を見極めなければいけない。樹里だって、彼との結婚を描いてきた。それも、もう長く思い描いているのだ。
「写真……一緒に撮ったのはないんだけど。これなら、少しは信じて貰えるかな」
香澄は携帯を随分長くスクロールしてから、一枚の写真を樹里に見せた。それは、千裕がスヤスヤと眠っている姿。彼の後ろにぼやけて見えるのは、香澄が今している時計だ。周りに置かれているクッションはフワフワしていて、いかにも彼女が好みそうな物に見えた。何かが崩れる音がする。だって場所がどうであれ、ここに写っているのは、見紛うなく千裕だ。不安はどんどん大きくなった。