ジングルベルは、もう鳴らない
「すみません。今日のことは、本当に心配でした。あの人が原因なんだなって思ってます。でも、僕には何もできません。見ていたので、愚痴くらいなら聞けますけど……でも、言いませんよね」
「えぇと、そうですね。楽しく飲んで、忘れ去っていただければ十分です」
「それは分かりました。綺麗さっぱり忘れます。なので、僕の話聞いて貰えませんか」
「あ、はい」


 樹里の要望は叶うらしいが、大樹が嬉しそうにハイボールを傾けたのが怖かった。いつも飲まない人間の安心して飲めるペースが、全く分からないからである。このペースでいいのか、それとも速いのか。奢ってやると言った手前、加減しろとも言えない。


「僕、早瀬さんのことが好きなんです」
「あぁうんうん。そうかぁ……? 好き?」
「あ、ラブです」
「ラブ……」


 改めて何を言われるのかと思えば、恋の話だった。朱莉はあぁいう子だ。誰かが想っていたって、可笑しな話ではない。
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