ジングルベルは、もう鳴らない
『別れた男を完全に忘れるのには、どうしたらいいんですかねぇ』


徐に朱莉へメッセージを打つ。こんなことを気軽に言えるのは、今や彼女しかいない。投げやりで、救いを求めるようでもあった。くだらないことで足踏みなどしたくはないのに、思い出してしまうのはどうにもならない。


『新しい恋ですかね』
『って言ってみるけど、そう簡単にもいかないですよねぇ』


やはり、抹消するには上書きか。分かってはいたが、新しい恋などどう始めたらいいのか。婚活を始める? 今更、どうやって出会うものなのかも分からない。


「あんな男……忘れたい」


 思ったことが、つい口を出て溜息を吐いた。苛々して、おでこを掻く。眉間に皺が寄っている。折角、嬉しいほろ酔い気分だったはずなのに。
< 64 / 196 >

この作品をシェア

pagetop