ジングルベルは、もう鳴らない
第21話 この気持ちの正体
「樹里ちゃん、あのカレー屋ね。思い出したんだけど、タケシだったか、タケルだったか。人の名前だった気がしたよ」
「本当?」
朱莉はそう言って、タケトだったかな、と呟く。人の名前だったと分かっただけ、だいぶ進歩だ。朱莉との距離は、あの頃よりもずっと縮まっている。今ではこうして、彼女は『樹里ちゃん』と呼ぶ。それを嫌だと思ったこともないし、同じ会社にはいるけれどほぼほぼ仕事での接点はない。もう感覚的には、朱莉は普通の友人と同じだった。
樹里たちより先に、朱莉は店に着いていた。お疲れ、と手を挙げて近付くと、彼女も座ったままそれに応じる。いつもと同じような待ち合わせだったが、違うのは一つ。樹里の後ろにガチガチに緊張した大樹がいたこと。初めまして、と挨拶した彼の声は震えていた。きっと彼女は僕のことを知らない。ここに来るまでに、そう何度言ったか。微笑ましい自己紹介に頬を緩めてたが、それを受けた朱莉は違った。あっけらかんと言ったのだ。なんだ同期じゃん、と。その言葉に拍子抜けした大樹と、ケラケラ笑って「お疲れ」と微笑んだ朱莉。つられて樹里も、何だ知ってたの、と思わず笑った。そうして流れるように始まったのが、この飲み会である。
「本当?」
朱莉はそう言って、タケトだったかな、と呟く。人の名前だったと分かっただけ、だいぶ進歩だ。朱莉との距離は、あの頃よりもずっと縮まっている。今ではこうして、彼女は『樹里ちゃん』と呼ぶ。それを嫌だと思ったこともないし、同じ会社にはいるけれどほぼほぼ仕事での接点はない。もう感覚的には、朱莉は普通の友人と同じだった。
樹里たちより先に、朱莉は店に着いていた。お疲れ、と手を挙げて近付くと、彼女も座ったままそれに応じる。いつもと同じような待ち合わせだったが、違うのは一つ。樹里の後ろにガチガチに緊張した大樹がいたこと。初めまして、と挨拶した彼の声は震えていた。きっと彼女は僕のことを知らない。ここに来るまでに、そう何度言ったか。微笑ましい自己紹介に頬を緩めてたが、それを受けた朱莉は違った。あっけらかんと言ったのだ。なんだ同期じゃん、と。その言葉に拍子抜けした大樹と、ケラケラ笑って「お疲れ」と微笑んだ朱莉。つられて樹里も、何だ知ってたの、と思わず笑った。そうして流れるように始まったのが、この飲み会である。