バレンタインと恋の魔法
マカロン
どこにいたって目立つ君だから、いつも目で追っていた。





「こんにちは。お昼の放送の時間です。今日の担当は高一C瀬名(せな)朝比奈(あさひな)がお送りします。まずはリクエスト曲からです」



バレンタインソングの甘いメロディーが流れ始め、机や椅子のある雑談スペースに瀬名くんが入ってきた。



「あ、ありがとう。今日も何から何まで…」


「あはは、全然いいって」



向かい側に腰掛けコンビニ袋からたくさんのパンを取り出している瀬名くんに、もう一度小さくお礼を言う。



瀬名煌斗(あきと)。サラサラの黒髪に人懐っこい笑顔が特徴の、爽やかなクラスの人気者。


そんな瀬名くんとは、くじ引きで放送委員に入ったことがきっかけで話すようになった。


週に一度あるお昼の放送の時間に放送室で二人きりでご飯を食べるということは、人見知りの私に最初は抵抗があったけど今ではもう慣れて瀬名くんと雑談までできるようになった。


それに瀬名くんが放送から何まで全部やってくれるので、こちらとしてはものすごく助かっているしありがたい。



「今週のリクエスト曲、バレンタインソングばかりだったね」


「もう二月だもんね」



コロッケパンを豪快に頬張る瀬名くんに笑いそうになりながら、プチトマトを口の中に入れる。



「朝比奈さんは誰かにあげるの?バレンタイン」


「うーん、(あん)ちゃんと家族にかな…」
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