バレンタインと恋の魔法



「場所はどうする?一番近いカラオケとか?」


「あーいいんじゃん?たしか駅前のカラオケだったら大人数部屋あった気がするし」



放課後の教室はいつもより少しにぎわっていた。


どうやらクラスの暇な人で集まってみんなで遊びにいくようだ。


瀬名くんを中心にどこに行くか、予約しないと、などとみんなで楽しそうに話している。



「じゃ、(すい)。私今日約束があるから先帰るね」


「あ、うん。ばいばい杏ちゃん」



帰りの支度をしながら、何やら急いで教室を出ていく杏ちゃんに手を振る。


杏ちゃんと行ってみたいスイーツのお店があったんだけどな…。まあいいか。明日にでも誘ってみよう。



そんなことを考えながら鞄を持って立ち上がった時だった。



「ねえ朝比奈さんも来ない?」



行き先が決まったのか、ぞろぞろと教室を出ていくクラスメイトの最後尾にいた瀬名くんが私を振り返って話しかけてきた。



「え?わ、私…?」


「うん。あ、それかなんか用事ある?」


「いや、用事はないけど…」



瀬名くんは「じゃあ行こー」と言って手を掴んできた。
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