バレンタインと恋の魔法
何も感じていない瀬名くんがさらっと仲良い宣言をしてきて、焦って情報を付け足す。



「あー放送委員。なんだ、委員会が同じっていう共通点があるだけかぁー。ただ同じ委員会ってだけで瀬名くん、朝比奈さんと馴れ馴れしくしすぎだよぉー」


「なんだよ、別にいいだろ」


「まあ瀬名くんって誰にでも優しいし仲良くなろうとするから、気をつけないとダメだよ!勘違いしちゃう子だっているんだから!」



ちらりとこちらを見てきた姫宮さんの言葉がチクチクと刺さってきて、痛かった。


何も悪いことをしていないのに鋭く睨まれて、持っていたコップをぎゅっと握りしめながら深く俯く。



「…私、は、別に瀬名くんのことが好きってわけじゃない、です」



なぜか敬語になりながらそう呟き、空のコップを持って部屋を出る。


瀬名くんのいる放送室はとても居心地がいいのに、あそこは今にも帰りたいくらい居心地が悪かった。



私みたいな人はきっと瀬名くんと同じ委員会とかそういうきっかけがないと関わることだってなかっただろう。


…いや、瀬名くんは誰にでも明るい太陽みたいな人だから、もしかしたら話しかけてくれることもあったかもしれない。


そうだ、瀬名くんは誰にだって優しい。私だけが特別なわけじゃ、ない。



なぜかモヤモヤしながらオレンジジュースをコップに注いだ。





ジュースを注いでから部屋に戻ると、瀬名くんの隣はすでに別の女の子に取られていた。


元々あそこに戻ろうとも思っていなかったから、端っこの方に腰掛ける。
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