バレンタインと恋の魔法
「煌斗に誘われてきたの?」



オレンジジュースをちびちびと飲んでいると、突然隣の男の子に話しかけられた。


たしかこの人は瀬名くんと一番仲のいい、久遠(くおん)くんだ。



「えっと、うん。そうだよ…」



いつも瀬名くんの隣にいる久遠くんは、あまり笑っているイメージはなくクール男子といった感じだ。


そんな久遠くんとは一度も話したことがなく、人見知りが発動して自然と小さな声になってしまう。



真っ直ぐこちらを見ている久遠くんの視線に耐えられなくなり、慌てて俯く。



「多分私が一人でいたから、誘ってくれたんだよ。その、私人見知りで、友達って呼べる人も一人くらいしかいないし…」


「ふーん。たしかに煌斗は一人でいるやつとか見捨てられないタイプの人間だからな。…でも最近、放課後いつも朝比奈さんのこと気にして見てたよ。多分遊びに誘いたかったんじゃねぇかな。だから今日誘ったんだと思う」


「え…?」


「朝比奈さんの話とかもよく聞いてる。あいつかなり朝比奈さんのこと気に入ってるみたいだな。たしかに煌斗って誰にでも優しいしすぐ仲良くなるようなやつだけど、もっと話したいって思わないと自分から遊びに誘ったりしないと思うよ」


「…もしかして、さっきの聞いて…?」



久遠くんはしまった、という風に目を見開くと、そっぽを向いてしまった。



「…悪い、盗み聞きしてたとかじゃないんだけど、たまたま聞こえてきて…」



あの話を聞いて私が落ち込んでいると思って、励まそうとしてくれたのかな…?
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