バレンタインと恋の魔法
後ろ姿の瀬名くんと、その前には姫宮さんの姿もあった。


誰もいない教室で二人は立ったまま何かを話していた。



入っていい雰囲気なのかわからなく、固まったように足が動かない。



…ふと、姫宮さんが動く。


一歩瀬名くんに近づいて、顔を傾けそのまま…。



見ていられなくなり、今来た道を全力で走りながら戻る。



…もしかして、瀬名くんの言っていた好きな人って姫宮さんなのかな。


いつも一緒にいるし、仲良さそうだし、何よりもお似合いだし。


それなら二人は両想いということになる。



「…い…っ」


「うお…っ、いって…」



前を見て走っていなかったから、角から出てきた男子生徒とぶつかり転んでしまう。



「あ、あの、ごめんなさ…」


「うっわ、美少女!なになに君一年?」


「なあ、この子泣いてね?」



指摘されてから初めて自分が泣いていることに気づいた。
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