バレンタインと恋の魔法



「あの、姫宮さん…!少し、いいかな?」



帰る支度をしていた姫宮さんが私に驚いたように目を見開いてから、大人しく私の後を着いてきてくれた。


人気のない廊下の隅っこまで来ると、まだ戸惑っている姫宮さんに恐る恐る向き直る。



「…それ」


「え?」



姫宮さんは私が握りしめていた長方形型の箱を指差した。



「…瀬名くんに、あげるの?」


「あ…その、えっと…」



なんて切り出そうか焦りながら考えていると、突然「あーあー」とスピーカーから誰かの声が流れ出した。



「えっと、聞こえますか?放送委員、高一Cの瀬名煌斗です」


「瀬名くん…?」



姫宮さんも驚いたようにスピーカーを凝視している。


放課後の放送なんてないはずなのに、どうして。



「突然すみません。一分だけ、俺に時間をください。えー生徒会の先生から今日はバレンタインということで、場を盛り上げろと言われまして。みなさん、バレンタインは楽しんでいますか?」
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