バレンタインと恋の魔法
「瀬名、く…っ」



ちょうど放送室から出てきた瀬名くんに、突進する勢いで抱きつく。


瀬名くんがどこにも行ってしまわないように。強く。



「え、あ、朝比奈さん…?」


「…これ、開けて」



瀬名くんの胸に顔を埋めたまま、腕だけ出して箱を渡す。



「え、あ、あの、ちょっと一回離れ…」


「いや」


「え、いやって…。…まあいいや、これ開ければいいんだよね…?」



ラッピングのリボンを外す音がして、ぱこっと箱が開けられた。



「…マカロン?」


「瀬名くんが、バレンタインほしいって言ったから…」



顔を上げずにぼそぼそと喋る。



「ずっと瀬名くんは私にとってなんなのか、わからなかった…。友達とは少し違う気がするし、委員会仲間、って言ったらそうなのかもしれないけど…」



何かを察したのか、瀬名くんがぐいっと無理矢理私の体を離して顔を覗き込んできた。
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