バレンタインと恋の魔法
…って、そんなのどっちでもいいから早くどっか行って!


心の中でそうツッコミながら、用もないのに飲み物コーナーをウロウロする。



久遠は瀬名くんと一番仲がいいみたいだけど、私はなんとなく苦手だ。


何を考えているのかわからない無表情で、笑っているところなんて一度も見たことがない。


あまり関わりたくないタイプの人間。



「おっと、お嬢ちゃんちょっとごめんよー」



急に横からおじさんがお酒の缶を取るために現れ、どーんっとぶつかられる。



「え、わわ…っ」



うまくバランスを取れなくて、そのままスイーツコーナーでまだ悩んでいる久遠の背中に思いっきり顔面をぶつける。



「わ、あの、ごめん、久遠…くん」



久遠は怪訝そうに眉をひそめると、じっと私を見てきた。



「…だれ?」



その言葉でハッと我に返る。


そうだ、忘れていたけど近所のコンビニだしと思って、思いっきり変なTシャツに短パン、すっぴんに前髪も邪魔だからとちょんまげのように結んでいた。


それに私はいつもばちばちのメイクをして必死に可愛い“姫宮さん”を作っているから、すっぴんなんて絶対に学校の人に見せたくなかったのに…!
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