バレンタインと恋の魔法
「家帰って食べればいいじゃん…」


「二個も買って帰ったら姉貴に取られる」


「へぇ、お姉さんがいるんだ…ってそんなことどうでもいいわ!」



久遠はプリンを食べながら私をちらりと見てきた。



「学校と随分違うんだな。何あれ、作ってんの?」


「うるさいな、別に誰だって嘘の仮面くらい被るでしょ。瀬名くんの前だったら尚更。あ、私の本性バラしたらただじゃおかないからね」


「別に言わねぇよ。どうでもいいし」



久遠は最後の一口を堪能するように食べ終わると、すっと立ち上がった。



「にしてもおまえ、趣味悪りぃな」



それは金魚が『Hello』と言っているTシャツに対してなのか、それとも瀬名くんを好きなことに対してなのかわからなかった。


どちらにしてもムカつくことに変わりはなく、「うるさいー!」と叫んだ声が公園中に響き渡った。





「瀬名くん、お昼一緒に食べよ」



語尾にハートをつけながら瀬名くんににこっと微笑みかけると、瀬名くんは眩しい笑顔で「おーいいよ」と返してくれた。



「涼介と食堂行こって話してたんだ。姫宮さんも行こ」
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