バレンタインと恋の魔法
それほど本気なことが伝わってきて、なんだか悔しい。



「ねえねえ、瀬名くんと朝比奈さんって仲良かったっけ?」


「うん。仲良いよ。ね?」


「あ、えっと、放送委員で話すきっかけがあって…それで…」



さらりと仲良いとか言ってる瀬名くんも、顔を真っ赤にしてあたふたしている朝比奈さんも、全部イラつく。



「あー放送委員。なんだ、委員会が同じっていう共通点があるだけかぁー。ただ同じ委員会ってだけで瀬名くん、朝比奈さんと馴れ馴れしくしすぎだよぉー」



こんなことを言いたいわけじゃないのに、ムカついて嫌味しか言えない。



「まあ瀬名くんって誰にでも優しいし仲良くなろうとするから、気をつけないとダメだよ!勘違いしちゃう子だっているんだから!」



一度出てしまった醜い感情は大きくなるばかりだった。


朝比奈さんは顔を俯け、



「…私、は、別に瀬名くんのことが好きってわけじゃない、です」



そう呟きコップを手に部屋を出ていった。


瀬名くんはあからさまに傷ついた顔で呆然としていた。



私が、傷つけてしまった。好きな人を、瀬名くんを傷つけてしまった。



それから戻ってきた朝比奈さんは端っこの席で久遠と何かを話していて、その様子を瀬名くんはずっと気にしたように何度もチラチラと見ていた。


やっぱり瀬名くんにとって朝比奈さんだけが特別なんだ。
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