バレンタインと恋の魔法




「朝比奈さんは、瀬名くんが好きなわけじゃないんだよね?」



瀬名くんは私がどんなに頑張っても朝比奈さんしか見ていない。


でも、朝比奈さんは瀬名くんが好きではないと言った。



きっとあんなにバレバレな瀬名くんの恋心に気づいてもいないんだろう。



「…好きじゃ、ないよ」



だから、悔しかった。


朝比奈さんは私と同じ舞台に立ってすらいない。


それなのに、瀬名くんから好かれているのは他の誰でもない朝比奈さんだから。その事実が悔しくて憎くて、同時に羨ましかった。





放課後の中庭掃除から戻ると、教室には瀬名くんが一人窓の外を眺めて腰掛けていた。


…その席は、朝比奈さんの席だった。


鞄がまだあるから、きっと朝比奈さんのことを待っているのだろう。



「せーなくん。何してるのー?」



ぱっと笑顔を作って瀬名くんの前に立つと、瀬名くんはまだ他に人が残っていると思っていなかったのか、勢いよく立ち上がった。



「あ、いや、あの…」
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