バレンタインと恋の魔法
いつもニコニコとなんでもそつなくこなす瀬名くんが、珍しく狼狽えている。



「私ねー知ってるんだ」


「え、な、何が…?」



じりじりと後ずさっている瀬名くんに一歩近づき、ぐいっと顔を近づける。



「瀬名くんが朝比奈さんを好きなこと」



瀬名くんはみるみるうちに顔を赤くしていき、耳まで真っ赤になっていた。



「…え!?ま、まじか…。…俺ってそんなにわかりやすい?」



真っ赤な顔であっさりと認めた瀬名くんに、なんだか笑いが込み上げてきた。



「うん、かなりね。だけど本人はまだ気づいてないみたいだけど」



瀬名くんの恋心にも、自分の気持ちにも。


でも、悔しいから教えたくない。二人が両想いだなんて。



「朝比奈さんのこと待ってるの?」


「うん。…図々しいかもしれないけど、明日のバレンタイン、やっぱり好きな子からほしいから。頼もうと思って。…これってやっぱ重いかな?嫌われる?」


「さあ、朝比奈さんじゃないからわかんないけど…きっと大丈夫なんじゃないかな。まああの子にはど直球で伝えないと、色々伝わらないと思うけど」



…って、私ってばなんでこんな恋の手助けみたいな助言をしているんだろう。しかも自分の好きな人の。
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