バレンタインと恋の魔法
「…あれ、瀬名に姫宮、まだ残ってたのか?あ、そういえば朝比奈教室来なかったか?日誌の中にボールペン挟まってて渡しに来たんだけど…」



中に入ってきた担任が私たちを見てから、教室の中をきょろきょろと見渡した。



「いえ、来てないですけど…」


「あれ、おかしいな。ついさっき教室に戻っていったのに」


「俺、探してきます」



いてもたってもいられなくなったのだろう。


瀬名くんが素早く教室を出ていこうとし、ふと思い立ったように扉の前でこちらを振り返った。



「姫宮さん、ありがとね」



その眩しい笑顔に、ああやっぱり好きだなと思う自分がいた。





「えっと、聞こえますか?放送委員、高一Cの瀬名煌斗です」



突然校内放送から瀬名くんの声が流れてきて、驚いてスピーカーを凝視する。


目の前で瀬名くんにあげるという箱を持った朝比奈さんも、驚いてスピーカーを見上げていた。



「突然すみません。一分だけ、俺に時間をください。えー生徒会の先生から今日はバレンタインということで、場を盛り上げろと言われまして。みなさん、バレンタインは楽しんでいますか?」



いかにも人望の厚い瀬名くんが頼まれそうなことで、思わず笑いそうになる。
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