バレンタインと恋の魔法
マドレーヌ
誰も寄せつけない君に、どうしても近づきたいと思った。





「杏ちゃん、お昼の放送行ってくるね」


「うん、わかった。頑張ってねー」



ひらひらと手を振ると、翠は可愛く笑って振り返してきた。


週に一度、私の友達の翠は放送委員の仕事があるから、私は一人屋上の前でお昼を食べている。



翠は歩いているだけで周りの男子が振り返るような美少女で、天パだというふわふわの髪もまるで童話のプリンセスのようだ。


それに比べて私は顔は普通だし、勉強も普通、運動も普通となんの取り柄もないいたって普通の女子高校生。


高校生になるからとばっさりボブにした髪の毛は、裏で男子からこけしなんて呼ばれている。



「んー?ねえねえ、君一人?」



スマホを見ていた顔を上げると、知らない男子生徒二人組と目が合った。



「あれ、なんだ。別に普通じゃん」


「あれーおっかしいな。てっきり美人かと…」



面と向かって「普通」と言われ、言われ慣れているからってさすがに軽く傷つく。



「…おい」


「あ?」


「お、おい、やべぇって。天馬(てんま)だぞ」
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