バレンタインと恋の魔法
先輩に夢中になっていて、前からコーヒーを手に歩いてきた大学生くらいの男の人に気づかず、ぶつかって尻もちをつく。



「…おーい、勘弁してよ。コーヒーかかったんだけど」


「あ、ご、ごめんなさい…」



慌てて顔を上げると、大学生の男の人のシャツにコーヒーの染みが円状についてしまっていた。



「あの、クリーニング代払います…」


「はー?これ、高かったんだけど。クリーニングして落ちなかったらどーすんの?」


「え、えっと…」



どうしよう。どうしよう…。



「仕方ないから、五万で許してあげる」


「…え?ご、五万…?」



どう見たって五万円もするシャツに見えないし、それにそんな大金持っているわけもない。



「あの、そんなに払えな…」


「ああ!?払えないって言うわけ!?五万くらいなんとかして払えんだろ!」



男の人から大声を出されたことなんてなくて、驚いてびくりと肩が震える。



どうしよう、怖い。


誰か助けて…。
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