バレンタインと恋の魔法
視界いっぱいに鋭い目つきだけどどこか心配そうな表情の先輩がうつり、安心からか涙がぽろりとこぼれ落ちた。



「え、ど、どうしたんだ…?」


「あー怖かったよねぇ」


「琥太郎、その子店連れてってあげよう」



先輩は泣きじゃくる私を立たせ、少し迷った素振りをしてから優しく手を引いてくれた。



どこに連れて行かれるのかわからなかったけど、自然と怖くはなくて引かれるままについていく。


しばらくしてこじんまりとしたおしゃれなバーらしきお店につき、その頃には涙も落ち着いていた。



「未成年にあげられるのは今コーヒーくらいしかないや。コーヒー大丈夫?」


「あ、はい。ありがとうございます…」



サングラスをかけたちりちりパーマの男の人が、カウンター席に座る私の前に湯気の立つコーヒーを置いてくれた。


熱々のコーヒーを一口飲むと、ぽっと胸が温かくなりまた涙が出てきそうだった。



「落ち着いた?」



パーマの男の人が不器用に笑顔を浮かべながら聞いてきた。



「あ、はい。ごめんなさい、迷惑かけて…」



パーマの男の人が「全然」と答え、川田(かわた)だと名乗った。
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