バレンタインと恋の魔法
「だからちょっとしたことで自分から離れるやつじゃないと思う。杏ちゃんが琥太郎を本当に大事に思うなら、もう一度話してみたらどうかな?」



そんなの答えはもう決まっている。


天馬先輩と、一緒にいたい。まだ好きって気持ちも伝えられていないんだから。



「…先輩と話します」



そう言ってから、一週間が経ってしまった。


先輩と話すと決めたはいいものの、タイミングがなかなかなかった。



だから私は今日にかけた。今日はバレンタイン。


先輩に気持ちを伝えるにはもってこいの日だから。



ひょっこりと先輩の教室を覗くけど、先輩の姿は見当たらない。



「あ、あのすみせん。天馬先輩ってもう帰っちゃいましたか…?」



ちょうど日誌を持って出てきた女子生徒に声をかける。



「え、天馬くん?鞄はあるからまだいると思うわよ。…あ、たしか空き教室の掃除当番だった気がするわ」


「わかりました、ありがとうございます」



丁寧に教えてくれた女子生徒にぺこりと頭を下げ、端っこの方で待つことにする。


ぎゅっと握りしめてしまっていたお菓子の袋が目に入り、慌てて力を緩める。
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