バレンタインと恋の魔法
まず会ったらなんて言おう。


お久しぶりです?お元気でしたか?うーん、なんか全部変な気がする…。



…先輩、避けないで私の話ちゃんと聞いてくれるかな。



「…杏?」



弾かれたように顔を上げると、少し先の廊下の真ん中に先輩が驚いた顔で私を見つめ、立っていた。


先輩と久しぶりに目が合った。それに、初めて名前も…。



「…あ!ちょ、先輩!」



先輩はくるりと踵を返すと、走っていってしまった。


その後を慌てて追いかける。



「先輩、待って…。私の話聞いて…」


「俺に二度と話しかけるなって言っただろ!」



鬼ごっこのように廊下を駆ける私たちに、周りの教室からはなんだなんだと人が覗き出てくる。


だけど今はそんなのどうだっていい。



「待って…あーもう!止まって、天馬先輩!私は先輩のことが好きなの!だから、避けたりなんてしないで!」



やっと立ち止まった先輩に、もう想いが止められなかった。
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