バレンタインと恋の魔法
「…え?ええ!?な、なんで!?大学卒業してから、同棲してるんでしょ!?」



身を乗り出してきた依茉ちゃんに小さく頷いて俯く。



「学校で今扱いにくい生徒がいるみたいで、その子も楽しめる授業を作りたいって張り切っててね…。小学校の近くのビジネスホテルに泊まって、色々考えたりしてるみたい。ほら、うちって小学校から遠いからさ、その時間がもったいないんだって」


「うわ…小学校の先生ってやっぱ大変なんだね…。でもそうだとしても、麗のこと放ってるなんて許せないよ!」


「いいんだよ、それほど仕事熱心なわけなんだし、教え子を大切にしてる宙翔が好きなんだから。それに今日は帰ってくるって言ってたし…」



だから朝から張り切って、チョコレートケーキを作った。


今日はバレンタイン。私たちの記念日でもある大切な日だから。



宙翔を好きになったのは、高校の入学式の日。


上級生に絡まれていた私を助けてくれたのが宙翔だった。


だけど実は宙翔と昔に一度だけ会ったことがあり、その時から宙翔は私のことを好きでいてくれたみたいだ。


お互いの初恋が実って付き合ってからも、宙翔は私のことをとても大切にしてくれている。



「…でもね、最近はちょっと焦ってる」


「…え?」


「周りはみんな結婚していったり、それぞれの家庭を作っていっているのに私たちはまだ恋人止まり。忙しいのは仕方ないよ。仕方ないんだけど…少しだけ寂しい。もしかしたら宙翔は私のことなんてもう冷めていて、別れようっていつか言われてしまうんじゃないかって怖いの…」


「麗…」



こんなこと今まで誰にも言えなかったけど、親友の依茉ちゃんにはするりと本音が出てきてしまった。
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