バレンタインと恋の魔法
リビングのドアを開けると同時に、ぱっと電気がつけられた。



「麗、おかえり」



スーツ姿の宙翔が花束を持って穏やかに微笑んで立っていた。



「…宙翔?」


「あ、驚いた?帰ってきたら麗がちょうどいなかったから、どうせならびっくりさせようと思って暗闇の中で潜んで待ってたんだ」



一週間ぶりに宙翔の笑顔を見ていたら、なぜだか気持ちが込み上げてきて涙がこぼれていた。



「え、麗…?どうしたの…?」


「も、う、限界…っ。たった一週間だったけど、宙翔が家にいないのがすごく寂しくて…っ。みんな結婚とかの話ばっかりで、なのに私たちは離れてて、宙翔は私のことすごく大切にしてくれるのわかってるけど、それでも自信なくて…っ」



泣きじゃくり何を言ってるのか自分でもわからない私を宙翔がそっと抱きしめてくれた。



「ごめん、ごめんね麗…。不安にさせてたんだね」


「…こんなの、わがままだってわかってる。宙翔の仕事を邪魔したいわけでもないし、一生懸命な宙翔を誰よりも応援してる。好きだよ…」



好きだから、たくさんの醜い気持ちが出てきてしまう。こんな自分がいたなんて、知らなかった。


バレンタインは好きな人に想いを伝える日なのに。こんなことを伝えたいわけじゃないのに…。



宙翔は私の体をそっと離すと、何かを差し出してきた。



「…アルバム?」
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