嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉
「ぐっ!」
低いうめき声がしてカルロの体が後ろに倒れ、空中に投げ出された。
「危ないっ!」
リーゼロッテは思わず叫ぶ。このまま地面にたたきつけられると思ったが、地面に落ちる直前にカルロのヒッポグリフが彼の下に回り込みそれを阻止した。
(よかった)
リーゼロッテは心底ホッとした。
カルロの意識はあるようで、彼は素早く体勢を立て直すとぽんぽんと慰労するように自身のヒッポグリフの背中を叩いた。苦笑いをしたような表情でテオドールを見上げる。
テオドールも高度を下げ、ふたりはそれぞれの幻獣に乗ったまま握手を交わした。
その瞬間、今までで一番大きな歓声が起きた。勝負が付いたのだ。
(本当に、すごく強いのね)
あっという間の勝負だった。テオドールと結婚する前に聞いていた彼の『世界最強の幻獣騎士』という噂は本当だったのだと改めて思い知る。けれど、同時に気になったのは『血に塗られた辺境伯』という噂だ。
テオドールは被っていた銀色の兜を外し、周囲に向けて手を振っていた。
(あの噂について、アイリスなら何か知っているかしら?)
「ねえ、アイリ──」