嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉
男を誑かす毒婦であるリーゼロッテがまるで異性に対する経験がないことに疑問を持ったテオドールは、カルロを通して王都の諜報員達にリーゼロッテについて再調査するように命じていた。時期的に、そろそろ調査結果が纏まってきてもいい頃だ。
「ああ、あれならぼちぼち調査結果が届き始めているよ。まだ全部は揃ってないけどな。全部の報告が集約できたら、テオに報告する」
「届いたものだけでも見せてくれ」
「うーん。そうしたいところなんだが、内容に疑問を覚える部分があって──」
「いいから、そのまま渡してくれ」
その報告書を読めば、喉の奥に引っかかるようなこの違和感も消え去るかもしれない。
その一時間後、テオドールは報告書を読みながら混乱していた。
「なんだこれは。前回の報告書と書いてあることが全く正反対じゃないか」
テオドールは正面に座るカルロを睨み付ける。
「だから、内容に疑問を覚える部分があると言っただろう? 本当に、どうやったらこんな真逆の情報になるんだ」
カルロは顔を顰める。
報告書には、リーゼロッテは非常に勤勉かつ真面目な性格をしており、周囲からの信頼も厚かった。美人かつ公爵令嬢という身分を笠に着ることもなく、誰に対しても優しい淑女であったと書かれていたのだ。