嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉


 テオドールが訪ねてきたのは、その日の深夜だった。
 トントントンとドアがノックされ、私室のドアが開く。

「待たせたか?」
「いえ、大丈夫です」

 リーゼロッテは首を横に振ると、テオドールはリーゼロッテの正面に座った。

(旦那様がこの部屋を訪ねてくるのは、離縁を申し入れたあの日以来ね)

 数カ月前のことなのに、ずっと前のことに感じてしまう。テオドールはどことなく表情が硬く、緊張しているように見えた。

「お呼び出しして申し訳ありません」
「いや、いい。俺もリーゼロッテに話があった」
「話?」

 何の話だろうと不思議に思ったが、テオドールは「それで、なんの話をしたかったんだ?」とリーゼロッテに先に話すように促した。
「あの……」

 この質問は、もしかしてテオドールを傷つけてしまうかもしれない。けれど、テオドール=ラフォンという人を理解する上では知っておかなければならないと思った。

「どうして旦那様は〝血に塗られた辺境伯〟などと噂されていたのですか?」

 テオドールはリーゼロッテの質問が予想外だったようでわずかに目を見開き、ますます表情をこわばらせた。

「なぜそれを知りたい?」

 こんなにも冷たい声を向けられたのは、久しぶりだ。否が応でも乱暴されたあの日を思い出し、体が震えそうになる。
 リーゼロッテはそんな自分を心の中で叱咤し、ぎゅっと拳を握りしめた。
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