嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉
◆ 国王の計略
イスタールは世界でも稀にみる、幻獣が多く住む国だ。
そして、イスタールの特色ともいえるのが、グリフォンと馬の混血種であるヒッポグリフに乗る幻獣騎士を多数抱えていることだ。
幻獣騎士は空を飛べる分、通常の騎士よりもはるかに戦闘能力、移動能力に長けている。彼らは、イスタールが他の国に対して優位性を保つうえでも非常に重要な存在だ。
──ヒッポグリフではなく、グリフォンに乗る幻獣騎士が現れた。
そんな話を聞いたときは、国王は半信半疑だった。なんでも、幻獣が多く住まう地である北の辺境──ラフォン領の嫡男であるテオドール=ラフォンが、グリフォンに乗っているというのだ。
グリフォンに跨る彼は一騎当千の戦いぶりで人々に害をなす幻獣を討伐し、その姿は闘神のごときだと。
(いくらなんでも作り話だろう)
古い文献を辿れば純粋な野生の幻獣に乗っていた幻獣騎士が存在していた記録はあるものの、極めて稀だ。しかも、テオドールが乗っているというグリフォンは聖獣とも呼ばれる、幻獣の中でも希少な種類だ。
(よし、実際に見てやろう)
自分の国王在位中にそんなに都合よいことが起こるものかと思ったが、そんな疑いを払しょくするかのようにその男──テオドール=ラフォンは王都にやって来た。