嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉
「テオドール=ラフォンです」
幻獣に跨っていた若者が、さっと地面に降り立ち腰を折る。
彼の連れていた幻獣は通常のヒッポグリフより一回り以上大きく、鷹の上半身と獅子の下半身を持っていた。まぎれもなく、グリフォンだ。
その姿を見たときに、決意した。
(この男を手放してはならない)
なぜテオドールがグリフォンに乗れるかはわからない。けれど、おそらく自分が生きている間にグリフォンに乗る男は二度と現れないだろうと国王は思った。
『実は、わたくしの近衛騎士であるラット伯爵家のアドルフですが、オーバン公爵令嬢のリーゼロッテ様と婚約を円満解消することで合意しました 。ですから、リーゼロッテ様は婚約者不在になります』
数年経ったある日、第三王女のイラリアがそんなことを言いだした。
そのふたりが円満な婚約解消などするはずがない。なぜなら、オーバン公爵家の跡取りとすべく何年も前に取り決めた婚約なのだから。
だから、イラリアの言葉は嘘であると国王はすぐに気づいた。十中八九、そのアドルフという男が気に入って側に置いておきたいから無理やりこじつけて婚約破棄させたのだろうと予想がつく。