嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉

 イラリアに滞在する一週間をどのように過ごしてもらうかはリーゼロッテ、ひいてはラフォン領にとってとても重要なことだ。気持ちよく過ごしてもらえれば王室からの評価が上がるし、逆に不快な思いをさせてしまえば王室の不興を買うことになる。まさに、匙加減ひとつで領地全体に大きな影響が出るのだ。

 そして、リーゼロッテは色々考えた末に滞在中の一日はラフォン領の最新の工業、商業に関する案内をすることにした。三つの国と接するラフォン領はイスタールの中でも国際色豊かな地域で、色々と先進的な取り組みをしているからだ。

「旦那様もいらっしゃると仰っていたのだけど──」

 リーゼロッテは窓の外を見る。薄っすらと曇った空が見えた。
 先日、リーゼロッテはテオドールに、今日イラリアを案内する予定の工場の下見を行う予定だと伝えた。すると、テオドールも念のため見ておきたいと言ったので今日は打ち合わせから同席する予定だったのに、どうしても外せない打ち合わせがあるから先に行ってくれと言われたのだ。

(緊急案件っぽかったけれど、大丈夫かしら?)

 午前中に森の巡回に同行したテオドールは、屋敷に戻って来ると昼食をとる間もなく誰かと打ち合わせに行ってしまった。

「まだ時間はありますので、領主様がいらっしゃるまでお茶でも飲んでお待ちください」
「ええ、ありがとう」

 使用人によって運ばれてきた紅茶は、爽やかな味わいがした。

「あら? 珍しい紅茶ね」
「紅茶に数滴のレモン汁を加えています。外国の飲み方だそうです」
「へえ。爽やかな口当たりだから、特に夏によさそうだわ。そうだわ。この飲み方をレストランで──」

 新しいものに触れると、次々とアイデアが湧いてくる。レモンはラフォン領でもたくさん収穫できるので、新しい利用法が広がるのは喜ばしいことだ。
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