嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉
(もしかして、この人達……)

 まるで愛し合う恋人達のようなふたりの仕草を見た瞬間、リーゼロッテの中の女の勘が働く。

(そっか。そういうことなのね)

 ようやく理解できた。リーゼロッテの婚約者であるはずのアドルフは王女とただならぬ関係になっており、邪魔な自分は排除されるために嵌められたのだ。

「リーゼロッテ=オーバン。わたくしの大事な人たちを傷つけた罪は重いわ。アドルフとの婚約破棄を命じます」

 イラリアは勝ち誇ったようにリーゼロッテを見つめ、口元に弧を描いた。

 ◇ ◇ ◇

 リーゼロッテが帰ったあと、イラリアは上機嫌で祝杯を上げた。

「ふふっ、さっきのリーゼロッテ様の顔を見た? びっくりして目がまん丸で、せっかくの美人が台無しになっていたわ」

 思い通りに事が進み、愉快でたまらない。

「さてと。最後の詰めに向かわないとね」

 イラリアは持っていたグラスをテーブルに置く。
 もたもたしていてオーバン公爵から抗議が来ると面倒だ。そうならないために、オーバン公爵が出張に行っている今日のタイミングを選んだのだから。

 イラリアは部屋を出て、国王である父の部屋に向かう。

「お父様。イラリアです」

 父の元に到着したイラリアはトントントンとノックをして呼びかける。

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