嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉
「はっはっは。これは惚気られてしまいましたな。イラリア殿下にも良縁があるとよいのですが」
恰幅の良い外務大臣は、お腹を揺らしながら愉快そうに笑う。それに合わせ、周囲からもどっと笑いが漏れた。
「……ええ、本当にそうですね」
リーゼロッテも無理やり笑顔を作って笑う。
けれど、心の中は凍てついていた。
永遠のように長く感じた晩餐がようやく終わる。ほっと息をついたリーゼロッテはテオドールと一緒に自分の部屋に戻った。
「どうした。元気がないな」
テオドールはソファーの端にちょこんと座ったリーゼロッテの頭を撫でる。その手が優しくて、色々な感情が溢れてきた。
「今日はずっとイラリア殿下と相乗りしていたのですか?」
「いや。ルカードが嫌がるから、一時間も乗っていない。不満そうだったがなんとか宥めた」
「一時間……」
以前、テオドールが以前リーゼロッテを乗せて周遊したときも一時間位だった。二年以上妻でいる自分とイラリアが同じなことに、訳もなく悲しくなってしまう。
「リーゼロッテ?」
テオドールは怪訝な表情でリーゼロッテの顔を覗き込む。
「イラリア殿下が旦那様にべたべた触れていて、嫌でした。テオドール様って親しげに呼んで──」
「リーゼロッテ、どうした?」
「わたくしの旦那様なのに! それに、旦那様と他の女性が相乗りするもの嫌です!」