嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉

 一度口から出てしまうと、ずっと我慢していた感情が爆発する。一気に捲し立てて、テオドールが唖然としていることに気づき呆然とした。

「ごめんなさい。わたくし──」

 なんてことを言ってしまったのだろうと後悔が押し寄せる。
 自分はこんなに嫉妬深く醜い女だったのかと愕然とした。アドルフのときには一度たりとも感じたことがない感情だ。

 いたたまれなくなって両手で顔を隠すと、「リーゼロッテ」と呼びかけられた。

「旦那様、ごめんなさい。困らせるつもりはなかったのです」
「謝らなくていいから、顔を見せろ」
「嫌です。とてもひどい顔をしています」

 テオドールに出会うまで、こんな感情は知らなかった。
 いつも淑女然としているのが当たり前で、自分を取り繕うのは得意だと思っていた。なのに、彼の前だと上手く立ち回れない。

「大丈夫だ」

 テオドールはリーゼロッテの両手首を握ると、優しく顔から外す。目が合うと、ふわっと笑った。

「リーゼロッテ。可愛い」

 両頬を手で包まれ、軽く口づけられた。額、右頬、左頬、鼻と順番にキスを落とされ、最後にまた唇にキスをされる。

「嫉妬深いと呆れていないのですか?」
「呆れない。それだけ俺のことを好きなのだと思うと、可愛くてたまらない。それに、嫉妬深さなら俺も負けていない」
「旦那様も?」

 リーゼロッテは意外に思って目を瞬く。テオドールが嫉妬している素振りなど、全く感じなかったから。
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