嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉
「できるだけ早めに戻る」
「はい」
テオドールはルカードに乗って、部下達ともに飛び立つ。その姿が見えなくなるまで、リーゼロッテは彼を見送った。
(さあ、感傷に浸ってないで頑張らなきゃ)
テオドールがいないのだから、自分がしっかりしなければならない。
朝食の席で、テオドールがいないことに気づいたイラリアは早速不満を零し始めた。
「ねえ。どうしてテオドール様がいないの?」
「ですから、領地の端で山火事がありまして──」
「そんなの、放っておけばいいでしょう」
なんの躊躇もなく言い放たれた台詞に、リーゼロッテは言葉を失う。
山火事が広がって人が住むエリアに延焼すれば、多くの人達が亡くなる。命が助かったとしても、町全体が大打撃を受けるはずだ。
それなのに、放っておけばいいと言える神経が理解できない。
「テオドール様はラフォン領の領主です。領民の平穏を守る義務があります」
「たかが平民でしょう? わたくしは王女なのよ? どっちが優先されるかもわからないなんて。今日もグリフォンに乗せてもらおうと思っていたのに──」
見かねた外務大臣が「殿下」とイラリアを諫める。するとイラリアは不本意そうに顔を顰めた。
(どうしましょう。言葉が通じないわ)
これでは、まだヒッポグリフのほうが意思の疎通が図れる気がする。本気でそう思ってしまうほど、言葉が通じない。
一方のイラリアはふと何かを思いついたように表情を明るくした。