嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉
「そうだわ。わたくし、リーゼロッテ様にお話があるの」
「わたくしに?」
「ええ。少しふたりきりにしてくれる?」
イラリアが周囲に目配せをすると、側近たちは小さくお辞儀をしてダイニングルームから退室してゆく。
(なんの話かしら?)
ふたりきり、という状況に不安を覚える。
「ねえ、リーゼロッテ様。テオドール様をわたくしにくださらない?」
イラリアがそう言ったとき、リーゼロッテはすぐには言葉の意味が理解できなかった。それくらい、衝撃を受けたのだ。
「……おっしゃる意味がわかりません。テオドール様はわたくしの夫です」
「でも、それは王室がお膳立てしてできた縁でしょう? だから、王族のわたくしが終わりと言いえば、お終いのはずよ」
(王族がお膳立てしたから、王族のわたくしが終わりといえば、お終い?)
本当に意味がわからない。
リーゼロッテは確かに王室から命じられてテオドールと結婚した。しかし、ふたりは既に正式な夫婦であり、お終いといってその関係を清算するようなものではない。
リーゼロッテが何も答えられずにいると、イラリアはさらに言葉を続ける。
「〝血に 塗られた辺境伯〟だなんて言うからどんな化け物かと思っていたら、あんなに精悍な人だなんて。世界最強の幻獣騎士だし、見目もよいし、ヒッポグリフよりもグリフォンのほうがかっこいいし。彼って、わたくしを守るのにぴったりだと思わない?」
聞きながら、怒りが込み上げてくるのを感じた。