嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉

 死ぬかもしれない。本気でそう思ったのは、初めての経験だった。
 脳裏に「愛している」と囁いているテオドールの顔がよぎり、リーゼロッテはぎゅっと目を瞑る。

「旦那様っ!」

 その名を呼んだのは、無意識だった。
 ふいに体が力強く引き寄せられ、ぎゅっと抱き締められる。

「リーゼロッテ! 大丈夫か!?」

 焦ったような声は、大好きな人のものだった。顔を両手で覆っていたリーゼロッテは恐る恐る、後ろを振り返る。

「旦那様……!」

 心配そうにこちらを見つめるテオドールの顔を見た瞬間、緊張の糸が切れたように涙が零れ落ちる。リーゼロッテはルガールに乗るテオドールに抱き寄せられていた。ルカードはドラゴンから距離を取るように、空を飛ぶ。

「旦那様っ。イラリア……殿下がっ、……ドラ……ゴンの──」

 きちんと説明したいのにしゃくり上がってしまい、上手く声がでない。

「わかっている。大丈夫だ」

 テオドールは安心させるように、リーゼロッテの背中をトントンと叩く。そして、鋭い視線を前方に向けた。

「なんて愚かな」
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