嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉
(緊張……しないわけがないわよね)
結婚した男女が同衾したらどういう行為をするのか、知識としては知っている。けれど、当然体験したことは一度もない。
リーゼロッテはなんとなく、シーツを手でなぞる。そのとき、ふと視界の端でカーテンが動いた気がした。
「窓が開いているのかしら?」
そろそろ閉めないと冷えてくるし、虫が室内に入ってきたら大変だ。リーゼロッテは窓を閉めようと思い、そちらに近づく。
「あれ? 閉まっているわね」
寝室の窓は閉まっており、しっかりと鍵がかかっていた。
(カーテンが揺れた気がしたけど、気のせい?)
リーゼロッテは気を取り直し、部屋の中央へと戻る。すると、絨毯の上に太い紐が落ちていた。さっきまではなかった気がする。
「なんでこんなところに紐が?」
拾い上げようとした瞬間、リーゼロッテはそこから飛びのく。触ってもいないのに紐が動いたのだ。
(蛇? もしかして蛇?)
リーゼロッテの顔色がサーッと青くなる。
実は、リーゼロッテは蛇が大の苦手だった。幼い頃、ガーデンパーティで親の目を盗んでひとりで抜け出した際に、大きな野生の蛇に噛まれたのだ。
幸いにして強い毒は持たない種類だったようで大事には至らなかったのだが、それ以来蛇が苦手なまま、大人になっても克服できずにいる。