嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉
「きゃ……、きゃあーーーー!」
自分でもこんなに大きな声が出るなんてと驚くほど大きな声が出た。
すぐに隣の部屋からバシンとドアを開く音がして、先ほど挨拶した護衛が部屋の中に飛び込んでくる。
「奥様、いかがなされましたか⁉」
「蛇! 蛇! へーびー!」
リーゼロッテは蛇を指さして必死に叫ぶ。
恐怖から、護衛の後ろに隠れるように移動すると、彼の左腕をしっかりと掴む。護衛はすぐに部屋の床を這う蛇に気づき、腰にぶら下げている剣を右手で握ると蛇を一刺しした。
「処分しました」
リーゼロッテは恐る恐る護衛の後ろから蛇のほうを窺い見る。彼の言う通り、蛇は体がまっぷたつに切られてこと切れていた。
(助かった!)
蛇ごときで大袈裟だと言われてしまいそうだが、苦手なものは苦手なのだ。蜘蛛も蝙蝠も気持ち悪いとは思っても怖いとまでは思わないが、蛇だけはどうしてもだめだった。
「あ……ありがとう」
「どういたしまして」
「ああ。最悪の気分だわ。あなたがいてくれて本当によかった」
リーゼロッテは護衛の腕をしっかりと掴んだまま、ほっと息を吐く。ひとりのときにあの蛇と遭遇したら、絶対に退治なんてできない。