嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉
長期の視察が終わったとき、テオドールはいつも同行した部下たちを連れて馴染みの高級娼館に行く。一流の食事に一流の接待が受けられ、口も堅い。つまり、使い勝手がよいからだ。
単に飲み食いだけして帰宅する者もいれば、朝まで楽しむ者もいる。それは、各自の自主性に任せている。
(奥様、か……)
まだ見ぬ新妻について、テオドールは簡単に調査を行った。
それによると、リーゼロッテは嫉妬深く陰湿で、男癖も悪いともっぱらの噂だという。
だからと言って、今更この結婚をなしにすることはできない。国王から提案された縁談である上に、既に婚姻届けも受理されているのだから。
(どんな女かな)
噂通りの毒婦なのか、はたまた全くの誤解で普通の女なのか。
屋敷に到着すると、家令のセドリックが出迎えてくれた。
「リーゼロッテはもう到着しているのか?」
テオドールは執務室に向かいながら、横を歩くセドリックに尋ねる。
「先ほど到着して、お部屋にご案内しました」
「どんな女だった?」
「噂通り、大変美しいお方でしたよ」
セドリックは僅かに口元に笑みを湛える。
「お前が『大変美しい』と言うくらいだから、さぞかし美人なのだろうな」
テオドールもふっと笑みを漏らす。美女と名高かったテオドールの母に長年仕えていたせいか、セドリックの美人判定基準はとても厳しいのだ。
執務室ですぐにやらなければならないことを済ませると、テオドールは早速リーゼロッテの元を訪ねることにした。しかし、部屋の前の廊下で異変に気付く。
(おかしいな?)