嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉
(ようやくお会いできるかしら?)
期待に胸を膨らませていると、奥から「おい、テオ!」と先ほどの男の声が聞こえた。
「奥様がお前に会いに来ているぞ」
「なんだと?」
「だから、お前の奥様が今外にいる」
「……追い返せ」
「え? いいのかよ?」
「いい」
不機嫌な低い声が、はっきりと聞こえた。
しばらくして、先ほどの男は申し訳なさそうな顔をして戻ってくる。
「奥様、申し訳ございません。閣下は今、手が離せないそうで──」
手が離せないようには聞こえなかったけど?と言いたい気持ちをリーゼロッテはぐっと押さえる。テオドールは領主なのだから、彼が無理やり連れて来るのは無理だとリーゼロッテもわかっている。
「そう。お手間をかけさせてしまってごめんなさい。訓練頑張ってくださいね」
リーゼロッテはにこりと微笑むと、丁寧にお礼を言ってその場を去る。
ここにきてようやく、リーゼロッテは薄々感じていたことに確信を深めつつあった。
(わたくし、旦那様に避けられている?)
そうだとしか思えない。